『サウスバウンド』
奥田英朗 著
角川書店
平成17年6月30日発行
いばやの坂爪さんも何度も読んでいるとブログ内で書かれていた本です。
私は、地元の図書館でリサイクル本(もう図書館には並べない廃棄する本)として出されていたのを見て、貰ってきて読んだのが最初でした。
表紙からして沖縄が出てくるんだろうな~と思っていたら自分の住む島が出てきていたので驚いたものです。
不思議と、自分の住む島(地域)が題材になっているものに魅き寄せられちゃうんですよね。
坂爪さんも好きな本だということで、改めてちゃんと読んでみました。
西表島に引っ越してリゾート会社とドンパチするような内容だったと覚えていたのですが、
よくよく読むとなかなかヘビーな内容でもありました(笑)
前半の、小学生に高額のカツアゲを要求したり不良漫画みたいにリンチがあったりは読んでて辛かったです。大人の知らないところで、今もこんなことがあったら辛いなぁ。。ここは、物語上のフィクションであってほしい。
主人公が東京の中野在住設定で、下校時に中野ブロードウェイのまんだらけに寄るくだりは都会暮らしのリアリティを感じて面白かったです。私もよく中古同人誌買ったり売ったりしに行ったなぁ。。(私の場合は、電車で一時間以上かかったけど。)
なぜこの本が地元の図書館では廃棄本になってしまったのか、経緯は知るよしもありませんが
まぁこりゃ図書館に置くんじゃないと、(一般大衆に読ませるな~)と、圧力来ててもおかしくない内容でした。今思えばアベ政権が明らかにおかしくなってきた頃だったのかも。。
なんたってこの本では国と税金というもののペテンな一面や学校教育・“世間様”のトリックをズバリ言っちゃってますから。
これを始めて読んだ当時はまだあまり陰謀論も知らず、どっかの過激なキャラクターが言ってる戯言みたいなこと~なんて思って飛ばし飛ばし読んだものですが
今やネットで情報収集できる時代、
この本で語られていることがまるでリアル界で起こっていることの答え合わせに思えてきます。
論より証拠、ということで
以下、印象に残ったセリフを一部抜粋させて頂きます。
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「この国に生まれたら、無条件に、選択の余地なく、国民の義務と権利が生じるなんておかしいとは思わないか?
何かを押しつけられるということは、支配されているってことと同義だろう。
人は支配されるために生まれてくるのか?」
「底辺の労働者って、いいように搾取されてるんだ。
企業に安く使われて、暴力団に吸い上げられて」
「景気が悪くなれば、真っ先に切り捨てられるし、何の保障もないし。」
「革命は運動では起きない。個人が心の中で起こすものだ」
「集団は所詮、集団だ。ブルジョアジーもプロレタリアートも、集団になれば同じだ。
権力を欲しがり、それを守ろうとする」
「個人単位で考えられる人間だけが、本当の幸福と自由を手にできるんだ」
「一人でも私腹を肥やそうとすると、政治経済が発生するの。
誰もそんなこと思わなきゃ、政治家も資本家もいらないの。
お金がなくても、コンスタントに貧乏だと、ちゃんと人は幸せなんじゃないかなぁ」
「世の中にはな、最後まで抵抗するだけで徐々に変わっていくことがあるんだ。
奴隷制度や公民権運動がそうだ。
平等は心やさしい権力者が与えたものではない。
人民が戦って勝ち得たものだ。
誰かが戦わない限り、社会は変わらない。」
誰にも支配されたくなくて、国から一人だけ抜けて生きていくなんて、自分勝手に決まっている。
けれど国が正義だとも思えない。
抜ける自由を許さないというのは、支配者の考えだ。
警察や企業に楯突く一人の男を、痛快に感じ、面白がりはするものの、我が身に置き換えたりはしない。
テレビの前の大人たちは、一度も戦ったことがないし、この先も戦う気はない。
戦う人間を、安全な場所から見物し、したり顔で論評する。
そして最後には冷笑する。
それが大多数の大人だ。
「でも空いてる土地って、日本にはないんでしょう?土地には必ず誰か所有者がいるわけだし」
「うん。そうだね。国って鬱陶しいね。こんな南の島まで支配するんだから。年金も健康保険もいらないから勝手にさせろって言うの」
「人の物を盗まない、騙さない、嫉妬しない、威張らない、悪に加担しない、そういうの、すべて守ってきたつもり。
唯一常識から外れたことがあるとしたら、それは、世間と合わせなかったってことだけでしょう」
「それがいちばん大きなことなんじゃないの」
「ううん。世間なんて小さいの。
世間は歴史も作らないし、人も救わない。正義でもないし、基準でもない。
世間なんて戦わない人を慰めるだけのものなのよ」
「卑怯な大人にだけはなるな。
立場で生きるような大人にはなるな」
毎日誰かが何かを分けてくれる。
お金がなくても不安じゃないというのは、なんて素敵なことだろう。
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どうでしたでしょうか??
セリフだけでは内容が分からないでしょうし、
抜粋した一部だけ見て判断できるものではないので、気になった部分がありましたらぜひ実際に読んでみてほしいです☆
普段あまり小説を読まない私でも3日くらいで読めたので、読みやすい本に入ると思います。
個人的には、第二部・西表編が面白かったです◎
現実的に、島の方からの差し入れが誰にでも毎日ある訳ではないと思いますし、
本の内容ほどユルい社会でもないと思いますが………
かつては実際にこんな部分もあったんじゃないかなーなんてリアリティも感じて想像力を掻き立てられました。
森の中の廃屋をリフォームして住むなんて、素敵ですよねぇ。。西表島はハブがいるので少々危険かもしれませんが、私は憧れます。
御嶽(うたき)のような森の中に住めるなんて、なんて素敵でしょう♪♪
主人公・二郎が、「だあーっ」とうなだれながら破天荒な父を客観視しているところも好きです。
父親は確かに破天荒ですが、軸がぶれず、自分の意見をはっきり言える。凄い人なんです。
どんな権力や論破にも屈しない。負け戦でも、最後まで立ち向かいます。
憧れるなぁ。。
私だったらさっさと長いものに巻かれるかも。(о´∀`о)
あそこまで立ち向かえるほどの実力はないかな。。
口ゲンカ弱いし。
論破が得意な人がいたら、瞬殺で負けてそうです…。。
まぁ、出来るか出来ないかは
『やるか、やらないか』だけの違いですよね。
「革命は、個人が心の中で起こすものだ」
というセリフも好きです。
自分一人の力なんて大したことないと思ってましたけど
革命なら個人個人で起こせる。
これってある意味希望。
個人的でも、革命なら起こせるんですよ。
コロナでいろんなものが崩れて社会基板が揺らいでいる今だからこそ、
たくさんの方に読んでもらいたいし、
映画化とかもして欲しいな。。
テレビでは流せないでしょうが(笑)
今じゃ図書館にもないかもしれないですが、文庫版とか出てたらぜひ読んでみて下さい。
また、この本は角川書店から出てまして、坂爪さんの著書も同じ角川なんですね。
エヴァンゲリオンも角川ですし、角川書店って、なかなか前衛的で挑戦的な作品を出してくれてるんですね(^_^)
確か、毎年石垣の学校に多額の図書購入費を寄付して下さってる方も昔・角川書店に勤められていた方だったと思います。
石垣市が30年前の半分にまで図書館図書購入を減らすなか、本当に素晴らしいことです。
オヤケアカハチの話も、改めて勉強したいと思います。
(それにしても、オヤケアカハチの父親が乱入したという拝所(御嶽?)はどこにあるんだろう??そこんとこの言い伝えは聞いたことがなく、私の中でナゾになっている。。)
もう一つ脱線すると、オヤケアカハチに関する史跡は石垣島の大浜に実際にあります。
そこのすぐ近くにあるフルストバル遺跡も、個人的にオススメです♪今は復元された石積が大半なんですが、あそこにかつて実際に人が住んでたと思うと、想像力とロマンを掻き立てられます。