離島生活で思ったこと

沖縄の離島で暮らす中で思うこと、考えたことをつらつらと書いています。思考のウンコのようなものなのでまとまりはないです。

農民のバラッド

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  石垣島のローカル出版社が発行している情報誌・やいま10月号に自衛隊基地建設を危惧する秀逸な記事が載っていたので無断転載となりますが転載させて頂きます。

 

問題がありましたら削除しますので申し訳ありませんがお知らせ下さい。

 

 

少しでもこの問題に向き合う方が増え、

 

平和な島の生活に結びつけばと願います。

 

同時に、実名を出して紙面上で自分の意見を述べた書き手の方の勇気に敬意を表します。

 

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《闘う農民のバラッド》

 

タネを植え、水をやって、話が咲く。そこに実をつけて、大事に育て、あなたに贈るー。

 

  僕は嵩田地域で農業をしている二十八歳です。普段はそんな農作業の日々ですが、今回は慣れない筆を執らざるを得ない状況になりました。若輩者のくせに生意気ではありますが、書かせて頂きます。

 

実は最近、「頑張ってるな」「何を目指してるの?」「議員になりたいば?」など、冗談交じりのいろんなお声をかけて頂きます。

そんな大それたことは考えていません。ただ、モテたいだけです。というのは冗談ですが、理由のシンプルさは似ています。

それは、他地域の青年会が、アンガマーや獅子舞、赤マタ黒マタ、エイサーなど、地域の活動を一生懸命頑張っている感覚に近いでしょうか。

僕は、自分の地域を守りたいだけです。

 

僕が生まれ育った嵩田地域はまだ若い地域です。

戦前に台湾や宮古から移ってきた方々が、切り拓いてできた地域です。

祭りや伝統行事もありません。でも、形や文字にできない〝誇り″や″文化″が確かに存在します。

そのため、農業の後継者がたくさん戻ってきている、まぶしい農村です。

そんな地域の東側に基地を造るというのが、政府の計画です。

この計画が、全国でも類を見ないミサイル部隊を含む超攻撃型の基地計画だと、知る人は何人いるでしょうか。

 

 

◇国の専権事項◇

 

「もしも自分が国の王様だったらー」なんて考えたことはないでしょうか。

僕は小さい頃、そんな淡い夢も思い描いていました。

少し大人になった今では、現実味を帯びた空想をします。「もしも自分が国の権力者だったらー」

 

僕がもし大きな権力を持った国の政治家だったなら、まず「国」という鎧を身にまとうでしょう。

「国が進めている事業ですから」「これは国の最優先課題として」「国の専権事項なので」

 

『国』という言葉を使うことで、あたかも大衆の意見のような正義感のあるようなニュアンスに変わってしまいます。

僕ならその便利な言葉を利用して、その地位に少しでも長く座っていられるようなルールを作るでしょう。

議席数を増やしたり、自分が受かりやすい選挙法を作ったり。

 

次に、この権力や言葉を利用して、自分を支持してくれる個人や団体へ国の補助金や補助事業の優遇を行うでしょう。

支持者に「貸し」をつけておくのです。

職員は忖度してくれるので、その話は簡単に通るかもしれません。

反対に、僕の地位を脅かすようなデモや運動は止めなくてはいけません。

表向きは「テロ対策」「反国家勢力対策」などと謳い、僕ら権力者に歯向かう団体を取り締まる制度を作るでしょう。

 

最後に、僕が行いたい政策には「国の専権事項」と称して国民に四の五の言わせず、強引に推し進めるでしょう。

法律上、地方と国の立場は対等になっていますが、「国のー」と言えば国民はひるむため、カネと権力で推し進めていきます。

 

さて、お気付きの方もおられるのではないでしょうか。

そうです。

僕より先に似たようなことを行っている方々がいるのです。

今の中央政府のやり方がそうでしょう。

〝国の″専権事項もいいですが、「景気・雇用」「高齢者の社会保障」「教育・子育て支援」、〝国民の″専権事項はどちらに行ったのでしょう。

 

 

ステレオタイプ

 

「ねえ、カンフーやって見せてよ」

淡いブラウンの眼を輝かせて、僕に問いかけてきた彼の顔を今でも覚えています。

僕は大学時代の四年間をアメリカで過ごしました。

大学はアーカンソー州という中南部のとても田舎の州にあったため、そこで僕の常識が通用することはなかなかありませんでした。

 

まず、目を輝かせてきた彼は、アジア人は皆カンフーを授業で習うと思っていました。

ちなみに、彼らの辞書に『ジャパニーズ』というものはなく、日本人だろうが韓国人だろうが『チャイニーズ』なのです。

僕らが、『外人』は皆 英語を話すと思い込んでいるのと、似ているのかもしれません。

 

他にも、『アジア人はみな数字が得意でガリ勉』だったり、『忍者のような殺し屋が存在している』と彼らは信じていました。

彼らが作り上げたアジア人への大衆イメージが、そのようなステレオタイプを生み出しているのです。

 

僕たちは、たくさんの先入観や固定的な概念の上で生活しています。

先ほどの例のように、大衆が生み出したイメージから来るものもあれば、誰かが得をするように刷り込んだイメージから来るものもあります。

 

世界的に有名なものに、一日三食を世界で流行させたトーマス・エジソンの話があります。

明王として知られる彼は、当時パンを焼くトースターを発明しました。

トースターの売れ行きが思うように伸びずに、悩んだ彼はある宣伝を始めます。

それが「一日三食」です。

それまで一日二食が当たり前だった時代に、「発明王の自分は三食食べている」とすることで、「三食が良い」と世間に刷り込ませました。

一食増えた分、トースターを利用する人が増えます。

さらに、エジソンは電力会社も経営していたため、電気代も稼いで一石二鳥の結果となりました。

 

身近なものだと、土用丑の日のウナギやバレンタインデーのチョコなど、企業側がうまく世間に刷り込んだビジネスのための概念が浸透しているかと思います。

 

では、本題に入りたいと思います。

僕が小さい頃からずっと違和感を抱いていた問題です。

 

「身を守る」や「防衛」のイメージに武器が出てくるのはなぜですか?

 

日本に元々ある「護身術」の教えは、相手を打ち負かすことよりも、自分が安全に逃れる方法を説いています。

そして、普段から危険な状況に身を置かない、ということが実践的な護身術だそうです。

何が言いたいのかといいますと、僕には、守るために武器を使うという常識は、刷り込まれた概念にしか思えません。

 

毎年、アメリカでは学校や市街地で起きる銃乱射事件が後を絶ちませんが、なぜ銃が無くならないのですか?戦争は悲惨だと歴史やニュースが伝えているのに、なぜ争いが絶えないのですか?

 

答えはシンプル。

〝儲かる″からです。

人々が争えば争うほど、戦えば戦うほど儲かる産業があります。それが「軍需産業」です。

軍事大国と呼ばれるアメリカの軍事企業トップ10は、売り上げの桁が「兆」です。

日本もその売り上げを支えるお得意先のひとりです。2017年には約3600億円もの武器を買いました。

世界では、平和を願って活動する人々とは対照的に、ビジネスのために争わせようとすつ人々が存在しています。

とても残念ですが、それが現実です。

 

想像してみてください。

あなたは銃を持っています。目の前に、同じように銃を備えた兵士と、何も持たないあなたの親友が立っています。二人ともあなたの敵です。

どちらを撃ちますか?

もちろん個人差はあると思いますが、僕はたとえ敵だろうと、無防備の親友は撃てません。

 

僕が思う最大の「防衛」は「繋がり」です。

繋がりが強ければ強いほど、防衛力は高まると思います。

きっと誰だって自分の親・兄弟へは攻撃したくないはずです。人間はロボットと違って感情を持っています。他人と知り合って、心通わし、繋がることで、いつかはその感情がブレーキ役になってくれると信じています。

お金では買えない最強の盾。

それは人間だけが持っている、地味でクサいけど、すごく温かい、人と人よの繋がりです。

 

本物の防衛は「外交」でしか築けません。

しかし、本物の外交をして世界が平和になると困る人たちがいます。

実際にアメリカの了承なしで中国と笑顔で協定を結んだ当時の田中角栄総理はどうなったでしょうか。ロッキード事件で表舞台から姿を消されました。とても残念ですが、これが現実です。

 

 

◇遺言

 

もし僕が死んだら、この世の権力によって殺されたんだと思って下さい。

一応冗談ですが、本当に冗談で済むことを祈っております。それほど、見えない大きな権力による〝圧″を日々感じています。

 

まずは島の先輩方へ。

本当は助けてほしいです。

こも大きな権力に向かって「このやり方はおかしいだろ」って言える大人はどれほどいるでしょうか。

しがらみの多いこの小さな島で、大きな声をあげることはとても難しい。僕だって、自分の集落の話でなければ、今頃知らん顔して過ごしていたでしょう。わざわざ人間関係のリスクを負ってまで、火事の現場に飛び込んでいくようなことはしません。なので、他の地域の人を責める気は全くありません。

 

でも、このミサイル基地問題を追い続けてもらいたいです。目を背けずに、しっかりと見続けてもらいたいです。いつか来ます。保革を超えて、島がひとつにならないといけない日が。島んちゅが立ち上がらないといけないときが。その時を見逃さないためにも、この問題から目を離さないでください。

 

次に、同世代のみなさんへ。

僕らが見えますか。島の中央部で、必死になって闘っています。子育て世代のみなさんですから、子どもから目を離せないと思います。どうぞ、耳だけ貸して下さい。

今、なにが聞こえますか。特に変わった音はしませんか。…実はそれがいいんです。この島ならではです。

今や沖縄でも少なくなった、基地のない島です。

 

しかし現在政府は、南西諸島防衛のためにオスプレイ17機を購入予定です。

一機200億円以上。基地ができればオスプレイ石垣島に来ない理由がありません。

 

聞こえますか。低空飛行でプロペラを振り回す音がー。墜落率が最も高い、危険な足音がー。

耳を済まして下さい。それは着実にこの島に近づいて来ています。その音が聞こえないうちにしか止められません。今後、島を引っ張っていく若い世代、僕たちがやらないで誰がやるんですか。

もし、僕の声が届いたなら、島の中央部にも耳を傾けて下さい。ずっと前から闘っている人たちがいます。そして「百聞は一見に如かず」。予定地を見に来ませんか。パインとサトウキビが広がる大地。みなさんの飲料用水にもなっている水源地。もう一度自分自身の目で見て考えて下さい。

本当にここに基地が必要ですか?

 

最後に、この島の後輩たちへ

君たちは島の未来です。僕らが生まれ育った「平成」の時代が終わろうとしています。次はどんな時代が来るのでしょうか。最近の異常気象や多発する自然災害に象徴されるように、怒涛の時代になるでしょう。物事を見きわめる目を養って下さい。

 

僕がアメリカにいるときに、お世話になった人生の先輩から頂いたアドバイスがあります。

「何か事件や大きなニュースが発表されたとき、誰が得をしたのか考えなさい。そうすると、世の中の流れが見えてくる」

そのまま、君たちに引き継ぎます。君たちの知っている常識や概念は、誰かが誰かのために作った都合の良い常識です。作られた色眼鏡やレンズにとらわれずに、まっさらな自分自身の目で物事を見極めて下さい。デマや雑音が流れ続けるイヤホンを外して、自分自身の耳で着実に耳を傾けて下さい。

いつか君たちにいい位置でバトンを渡せるよう、いまは僕らが頑張らないとね。

 

 

◇夜明け

 

「何を目指してるの?」

「何もないよ。ただ自分の地域を守りたいだけ」

消灯し、まぶたを閉じた頭の中で自問自答している自分がいます。そんな自分を病気かなと心配しながら、そして憂えながら、今宵も夢の中へー。

 

「国」という名も鎧を身にまとい、権力という名の刀を振り回す権力者たち。「この地には防衛のための軍事基地が必要だ!」彼らが作った概念の旗を掲げ、僕らの畑を踏み荒らす。島の経済を支えてきたパイン畑やキビ畑をー。

「中東の次のビジネスターゲットは南西諸島だ!カネになるぞ、武器を運べ!」

権力者のうちの誰かが叫ぶ。僕らは無力。

力で抑えつけられ、ただただ変わりゆく土地を見ているだけー。

でも、僕は農家。農家には農家らしい闘い方ー。

 

そうだ、ここにタネを植えよう。いつか花咲く平和のタネを。

僕らがいなくなっても、ここでずっと咲き誇るように。そしていつか実を結んだのなら、きっと甘くておいしい実になるだろう。鳥たちが食べたくなるような。

もし食べてくれたのなら、遠くまで運んでおくれ。タネを世界中に届けておくれ。いつか、この平和の花が世界中で咲き誇るように。

 

そう、はじまりはここから。

僕らの地域から。

ここ、石垣島から。

 

世界の夜明けに、優しく響く。

闘う農民のバラッド。

 

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以上です。万が一、誤字脱字があった際には申し訳ありません。

 

石垣島に起きている自衛ミサイル基地問題は、同じ八重山地域に住む波照間島にとっても他人事ではありません。自治体としてのくくりは違いますが、天気が良ければ島から見えるし、買い物や通院、内地に向かう時の飛行機利用など、周辺離島にとってもなくてはならない拠点となる島です。親戚や知り合い・島の子もたくさん住んでいます。国内移住者のみならず、台湾からの移住者の方達もたくさんいます。

石垣島は、既にグローバルな平和社会を築けていると思う。

 

 

『平和』や『安全』は誰にとっても生きてく上で重要なものであり、

それを築けるのは上記でも述べている通り外交や友交・繋がり。

 

恐れからくる武器武装や威嚇はもうダサい。

ゆいまーるが息づく沖縄でカネに走るのも醜い。

 

 

 

勇気を出した一歩先にある交流を、和平を、掴みに行きたいですね。

 

だってそのほうが面白いはず。絶対。